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INTERVIEW「わがままカレッジ(前編)」

《「ありのまま」で人を惹きつける “僕らのロックバンド”(前編)》 

わがままカレッジは、音楽も人も楽しい、面白い!…もうこれに尽きる。それこそいろんな書き出しを考えたけど、結局この一言が一番しっくりくる表現だと、取材音源を聞き終えた時に思った。高校時代に銀杏BOYZに出会い大きく影響を受けたというボーカル山下を軸に、Pファンクやソウル、パンクをはじめ幅広いジャンルを吸収しているメンバーが生みだす音楽は、ストレートで遊び心満載のロックであると共に、本人たちが語るように普遍的な“みんなのうた”である。

だから彼らのライブには女の子からオジサマまで、いろんな人が訪れる。それって実はとってもすごいことで…。と、ここで長々書くよりも、この先を読んでもらった方が早いだろう。軽度の下ネタ含め包み隠さずお送りする約2万字のインタビューで、ぜひ彼らの魅力を知っていただきたい。

取材・文/ 山田百合子 撮影/ 長塩禮子 撮影協力/フローチャート

写真《L→R》タケイカズマ(Dr.) モリヒロ(Gt.) 山下ゆうき(Vo.Gt) 井上まさや(Ba.)

大学の頃は「歌や演奏が上手いから何だ!」って気持ちが強かった(山下)

―初の全国流通盤リリース、おめでとうございます!!

一同:ありがとうございます!!

―早速ですが、なぜアルバムタイトルが『生命大躍進』なんでしょう?

山下ゆうき(以下山下):アルバムのジャケット写真を撮りにカメラマンと上野に行ったんですけど、そのときまだタイトルを決めあぐねてたんです。そんなときに上野で『生命大躍進展』っていう展示会をやってて。

―展示会…?

山下:古代生物の進化を辿る、みたいなやつです。そのポスターにでっかくゴシック体で“生命大躍進”って書いてあって、「あ、これで良くね?」って。

―そこから取ったんだ!全員一致で決定ですか?

モリヒロ:はい。もうポスターに向かってみんなで走り出してました(笑)。

井上まさや(以下井上):これだーっ!て言ってね。

―そうだったんですね(笑)。アルバムのイメージとすごく合ってるタイトルだと思います。

山下:そうですね、パワフルで。多分自分たちで考えてても決められなかったと思うし(笑)。

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大学の4年間、俺と山ちゃんは一言も話したことなかったんです(井上)

―なるほど。ちなみに、みなさんの出会いと結成のいきさつってどんな感じだったんですか?

モリヒロ:俺と山下は同じ大学で、一緒にバンドやってて。俺はギターで山下はベースで、ボーカルは別にいたんです。で、山下はそれとは別にボーカルやってるバンドがあって、それを観に行ったり…。なので俺ら2人は大学1年くらいからの付き合いですね。

山下:大学の軽音サークルで、他の大学と交流する「関東七大学音楽祭」っていうイベントがあったんですよ。まさやん(井上)とはそこで出会って…。

井上:僕は別の大学だったんですけど、僕の大学のサークルは山ちゃんとモリヒロがいるサークルと仲良くって。よくそこに遊びに行ってたんです。

モリヒロ:まさやん、その頃からパンイチだったよね。ふんどしみたいなのつけて…。

―パンイチの歴史、長いんですね。(※井上さんはいつもパンイチでライブに臨む)

井上:はい。とりあえず上は裸みたいなのは鉄則だったんで(笑)。…大学時代、俺と山ちゃんは一言も会話したことなかったんですよ。

―あら。お互い顔は知ってたのに?

山下:はい。まさやんは毎回のように定期ライブに来てて、みんなに「仙人」とか呼ばれてる人気者だったんです。

モリヒロ:うちのサークルの奴も、みんな仲良くて。

山下:で、俺は当時その…内にこもっていたというか、閉鎖的だったんで…。

タケイカズマ(以下タケイ):卑屈なね(笑)。

山下:でも気持ちは分かるでしょ?その関東七大学音楽祭っていうのが、ソウルとかファンクとか、そういうのを主にやるようなイベントだったんですよ。僕は当時、それこそ銀杏BOYZが好きでサークル入ったようなものだったから…「(演奏や歌が)上手いから何だ!」みたいな思想があったんですよね(笑)。

(一同笑)

山下:上手いしみんなイケイケだし、「俺はそんなんじゃない!」みたいな。まぁ単純に人見知りっていうのもあるんですけど。

タケイ:僕も関東七大学音楽祭のサークルに入ってたんですけど、そこでの繋がりはそんなになくて。今も続けてるthe rouxtzってバンドと、山ちゃんとモリヒロくんがやってたボナンザグラムってバンドで先に親交があったんです。

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インパクトがあって、検索にも引っかかるバンド名にしたかった(山下)

―なるほど。じゃあ4人で「わがままカレッジ」やろうぜ!ってなったきっかけは?

モリヒロ:もともと山下がボーカルをやってたベロドラマってバンドが活動休止になって、山下が「歌うバンドやりてー」って言ってたから、「だったら俺ギターやるよ」って誘ったんです。で、メンバーどうしようかって話になり…。

山下:そこで最初に出てきた候補がこの2人(タケイ、井上)だったんです。

モリヒロ:で、誘ったらOKしてくれて、そのままスタジオに入り…今に至る(笑)。

山下:大学卒業して2年くらい経ったときに結成しました。

―じゃあそこで初めて山下さんと井上さんは喋ったことになりますね。どんな感じでした?

山下:いや、もう普通に最高ですよ。

井上:すぐ2人で飲みに行ったよね。

―話してみたら打ち解けた?

井上:はい。だからそういう話もしましたよね。「大学のときさ~、山ちゃん全然喋んなかったじゃん!」みたいな。

山下:したね。鳥次郎でしたね。

―それは良かった(笑)。ちなみにバンド名の由来ってなんですか?

山下:特に深い意味はないんですよ。

モリヒロ:飲みながらバンド名考えてて、最初は“わがままユニバース”はどうかって話になったんです。で、俺が「じゃあわがままユニバーシティーがいい」って言って。

―ユニバーシティー(笑)!?

モリヒロ:で、そこから「じゃあカレッジにしようか」ってなって。

山下:「わがままナントカ」にしたいっていうのは元からあったんですよ。ひらがなを入れたかったし、英語にもしたくなくて。ちゃんとインパクトがあって、検索にも引っかかるようなバンド名にしたかったんです。

―素晴らしいですね。

山下:それがまず大前提であって。エゴサーチしやすいバンド名(笑)。

井上:よく「わがままなんですか?」って聞かれること多いけどね。

山下:僕らなんてそんなこともなく…ねぇ?郷に入れば郷に従いますよ、ほんとに(笑)。

―大人ですなぁ。

タケイ:思慮深いですなぁ。

(一同笑)

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名刺代わりじゃないけど“分かりやすさ”っていうのは1つの基準にしてます

―今作は初めて音源化された曲と、以前のアルバム2枚(『可愛い子はだいたい彼氏がいるe.p. 』『最THE高e.p.』)から楽曲を抜粋したもので構成されていますが、アレンジが大分違いますよね。よりポップというか間口が広くなったというか。歌詞も少しマイルドになって…。 

山下:まぁでも「チンコ」くらいじゃないですかね。

―それもありますけど(笑)、他にも「壇蜜の…」とか。

山下:古いバージョンの、何て歌詞だったかな。

モリヒロ:「壇蜜の体にアイコラをしよう~」とかだよ。…アイコラって分かります?アイドルコラージュ。

―分かります(笑)。

山下:よくお世話になったなー。まぁ壇蜜はちょっと今っぽくないかなと思い、言い変えるなら何だろうって考えたとき、「自撮り」かなと思って。

井上:うん、とにかく全体的にポップになりましたね。

タケイ:キモチ悪さは減ったかな(笑)。

―(笑)。ちなみに、前2作からの選曲理由は?

タケイ:“分かりやすく”っていうのは1つの基準にしてますね。

山下:名刺代わりじゃないけど、僕ららしくってことで。例えば「SWIMMING DAY」っていうライブでよくやる曲も候補にあったんですけど。ちょっと抽象的なので、“一貫性”っていう意味では違うかなということで外したり…。

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可愛い子を見つけて「可愛い子は大体彼氏がいる~」って言い逃げしてた

―なるほど。ではここからは収録曲について、1曲ずつ掘り下げてお話を聞かせてもらえればと思います。まずは「可愛い子はだいたい彼氏がいる」!

山下:この曲はもともと俺が弾き語りで歌ってたんですよ。

―歌詞はどんなときに浮かんだんですか?

山下:これは大学時代、仲がいい後輩と学祭のときに可愛い子を見つけて、「可愛い子は、だいたい彼氏がいる~」って言って去って行くということをやってたんです。

―実際にやってたんだ!?じゃあそこから発生したという…(笑)。

山下:はい、だからサビのフレーズだけは大学のときからあって。僕ほぼサークル内しか友達いなかったんで、キラキラしてる運動部系のサークルとかオールラウンドサークルの人とかと関わりがなかったんです。だから“関わる手段”としてそういうことをやってました(笑)。

(一同笑)

―聞かれた女の子は、答えてくれたんですか?

山下:いや、言い逃げですね。自己満足の世界です。そこから友人関係に発展することも全くなく。恥ずかしいじゃないですか、そういうつもりもないし…。なんか「ケッ」って気持ちもちょっとあって。「いいよな、そっちは」みたいな。

タケイ:ひん曲がってたね~(笑)。

山下:とにかくまずそのフレーズがあって、これをコードにして、その後歌詞考えようって流れでできた曲です。

モリヒロ:当時の歌詞に「セフレでいいから~」的なフレーズがあって、“ヒドイこと歌ってんなぁ”って思った記憶ある。

山下:あー、何か言ってたような…。

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―(笑)。じゃあそれぞれのパートでこだわった点や、特にここを聴いてもらいたいって所はありますか?

井上:古いバージョンはメンバーだけだったんだけど、この曲はコーラスの「いる~!」の声がいっぱい入ってるんですよ。コーラスも募集して。もうそこに尽きますね。あの部分があることで、ライブの光景が想像できるはずだから。みんなでやったら楽しいと思います。

タケイ:僕も同じですね。みんなの声の中でまさやさんの声が際立ってる部分を聴いてほしい。

―(笑)ほんとにそこですか?聴いてほしいとこって…。

井上:いや、そうっすね。俺の「いる~!」を聴いてほしいです(笑)。

―意識して聴くようにします。モリヒロさんは?

モリヒロ:俺はこの曲をいろんな大学のサークルにコピーしてもらうことを想定して、あまり難しい演奏をしていないんです。だからフレーズとか削れるとこは削ってて。ぜひコピーして、学祭でやっていただければと。

山下:わはは!そこまで想定してたんだ。

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―びっくりしました(笑)。最初のリフとか、すごくいいですよね。

山下:あれ結構さぁ、すげぇいいって言ってくれる人多いよね!

モリヒロ:一応全部テンションコードになってるんですよ、イントロのフレーズ。ガンガンに歪ませて、ちょっとお洒落に聴こえる雰囲気のコードを使ってる。

タケイ:僕もこの曲は分かりやすさを意識して叩いてますね。

―そうなんですね…だからあんなに惹かれるのかな。でもこれはコピーしたくなるかもです。じゃあ山下さんは?

山下:聴きどころというか、やっぱ(古いバージョンと)一番違うのは、キーボードを使ってるところですね。入れるか入れないかってことでレコーディング中にどうしようかみんなで悩んだんですけど。でも最終的に入れたことで、すごくポップス感とかスケール感が出て…。これはレコーディングしたときに鈴木秋則さんに入れてもらったんですけど。

―元センチメンタル・バスの!

シンガーソングライター山下のアンビバレントな性格と性癖?

山下:はい。あと個人的な狙いとしては、「可愛くない子もそこそこ彼氏がいる~」のところだけコーラスの「いる~」をなくしているという…(笑)。

―そういえば…。

山下:そこはね。敢えて(笑)。だからライブでもこう(拳を上げるしぐさを)…引っ込めるんです。

―以前お話されてましたよね。そのフレーズを歌ったときのフロアにいる女性の反応を見て…っていう。

山下:そうですね。この曲は女性に向けて訴えてる曲なんですけど、例えば“このグループの中で自分のことは可愛い”とか、そういうヒエラルキーというのを何となく感じながらキャピキャピしてる女の子たちに、「普通の子もだいたい彼氏がいる」と言われたときのショックを与えたいんです。

―そう、その話が聞きたかった(笑)!しかし何というか、鋭いところ突いてきますよね。ある意味女性を困惑させるというか…。一見何でも受け入れてくれそうで真逆の要素がある。それってやっぱり山下さんの世界なんですかね?

山下:ヒガミ根性みたいなもんだと思います。何なんでしょうね…女の子はすごい可愛いけど、調子乗るなよ、みたいな。

(一同笑)

―でもそこがまた1つの核かなぁとも思うんですよね。

モリヒロ:アンビバレントだよね。

―このアルバム、誰でも聴けるし間口も広い、聴いたら絶対忘れないまさに“みんなの歌”だと思うんですけど、いざ本人にお話を聞くとそういう要素も出てきて、そこが面白いなぁと思うんです。

山下:僕の性格なんでしょうね。

タケイ:“性格”もとい“性癖”?

山下:…この性格を、歌詞で女の人に聴かせるのが性癖!

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井上:山ちゃんって女の子好きだと思うんだけど、女の子に対して恐怖心があるじゃん、多分。

山下:怖いね。女の子怖い。

井上:でしょ?その揺れ動きを毎日のように見てるんで(笑)。

山下:はははっ(爆笑)。

モリヒロ:でも女子と話せない訳じゃないもんね。むしろよく話すし、女友達多いっていうか…。

山下:うーん…。でもその怖いってやつ、いいとこ突いてると思った。

―わがままカレッジの曲を作ってるのって山下さんだから、何かキーな気がするんですよね。

山下:…なんかコンプレックス的なものが関係してるかもしれないですね、やっぱり。

井上:だからそれを歌うっていうのがいいんだよ。“プライマルスクリーム療法”になってる、みたいな。

山下:(笑)敢えてそこでね。

―プライマルスクリーム療法?

井上:ジョン・レノンが「Mother」で歌った療法です。トラウマを敢えて大きな声で口にするといいっていう。ジョン・レノンはお母さんにコンプレックスがあったから「マザァーッ」って大きな声で歌ってる。それがプライマルスクリーム療法。

―勉強になります。

井上:カレッジですね(笑)。

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「とれいんろっく」は大人ばっかり出てくる童謡。人間賛歌です(井上)

―はい(笑)。じゃあ次の曲、「とれいんろっく」は?

井上:この曲は山ちゃんもいつも言ってますけど、“みんなのうた”だと思うんですよ。タイトルもひらがなになってて、大人ばっか出てくるけど、童謡みたいな。(笑)、人間賛歌ですね。

―人間賛歌、確かに!この曲は男女問わず、特に共感度が高い曲だと思います。

井上:そうですね。ここ切り取ってもそこ切り取っても、みたいな感じ。これも山ちゃんと飲んだ帰りに電車乗ってて、「みんな家庭がありますからねぇ」みたいな話してて。

山下:(笑)。そのとき電車の中でサラリーマンがケンカしてたんですよ。

井上:それを見てニヤニヤしながら「まぁみんな家庭もあるし、いつかは死にますからね」みたいな話をしてて…。

―それがこの曲が出来たきっかけですか?

モリヒロ:もとからこの曲、スタジオで悪ふざけ感覚で作ってなかったっけ?それにこの体験から生まれた歌詞が乗ったというか。

山下:そうそう。イントロなんかもう完全“ロック”で「あ、これいんじゃね?」とか言って、みんなで笑いながら。

―あははっ。でもこの曲聴いてると、すごく楽しいです。

モリヒロ:この曲に関しては全編、悪ノリです。

収録曲は全部一発録りです!(山下)

―そうなんだ(笑)。ちなみに一発録りじゃないんですよね?

山下:このアルバムですか?全部一発録りですよ!

―えっ!?すごい、そんな感じしない…ちょっとショック受けました。

山下:はははっ。

―じゃあモリヒロさん、この曲について改めて。

モリヒロ:“ギターってこういう楽器だろ”みたいな気持ちでやりました。ギャグですね。「お前ほんとはこういうプレイしないだろ」みたいなこと、よく言われます。

―本来の弾き方は違うんですね。

モリヒロ:“こういう感じだろうなぁ”ってやったらハマった、みたいな。

山下:(嬉しそうに爆笑し)モリヒロってそういうところあるよね。

タケイ:いろんな顔があるっていうか。

山下:あとこの曲はアーバンでもあるんですよ。田舎にいるとそもそも車社会だから、この状況ってないし。東京の電車って感じです。

井上:アーバン!確かにこれは東京の暮らしの歌だね(笑)。

タケイ:ちなみに僕の悪ふざけはレッド・ツェッペリンの「ロックンロール」のフレーズをまんまコピってる部分があります。

山下:どこ?

タケイ:小さくスネアで、ゴーストで入れてるんですよ。音源ではあまり分からないと思うけど、ちっちゃくスネアをずっと8分で鳴らしてて。それは完全に意識してやってます。

―そういえばツェッペリンって、事前に教えてもらったフェイバリットでみなさん挙げてましたよね。

山下:逆にあれで「みんな好きなんだ」って知りました。

井上:僕はツェッペリンだと思ってますけどね、4人のことを。

山下:うん、そうだよね。

モリヒロ:ジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズが逆転してるけどな(笑)

山下:確かに(笑)。で、この曲は歌詞的にはある意味“責任が自分にない”ところがいいなと思ってて。歌詞にも「僕はどこか蚊帳の外」ってあるけど。みんな家庭があるんだよなぁって外から見てる感じ。だけど周りから見たら僕もその1人で、みたいな。

井上:メタ曲だよね。第3者的な視点。

山下:曲のアレンジで言ったら、ギターにリバーブかけてたりとか、サビの裏声のコーラスの部分をビーチボーイズっぽくしてたりとか。

―じゃあかなりいろんなロックの要素が入ってるんですね。

山下:そうですね。スリーコードだし、ロックっぽい曲になってると思います。あと「幸せは始発に乗せて~」の部分は「上を向いて歩こう」のフレーズです。

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ライブで聴いてほしい、80’s感と遊び心満載のアレンジ

―あ、それは分かりました(笑)!じゃあ「LET’ S SEARCH!!」について。古いバージョンはもっとロックな曲調でしたが…。

山下:アルバムを通してですけど、エンジニアのKJ(上條雄次)さんもいろいろアイデア出してくれて。録ってる最中に80’s感出していこうかって話になり、タケちゃんにドラムをタイトに叩いてもらったら「いいじゃん!」みたいな感じで。じゃあ全体もこうしちゃおうって流れでできたのが、今回のアレンジです。

―歌詞の世界観ともぴったりですよね。

山下:はい、シンセも入ってますしね。

―歌詞の内容的にはちょっと女性が不安になるような(笑)。大好きだけど、なんかザワつくかも…。

(一同笑)

―でもこの曲があることで、よりバンドならでは面白さや遊び心が感じられるし、スパイスになってますよね。

モリヒロ:僕は80’っぽくって言われて、布袋(寅泰)さん意識してたっていうのはありますね。ギターでカッティング入れたりして。

山下:コーラスがっつりかけたりね。あとユニコーンのシンセポップ感のイメージでってKJさんにお願いしたり。それと「素敵なお嫁さん」っていう歌詞の裏で、神社で鳴る「ファ~ッ」って雅楽の音を入れてるので、そこも聴いてほしいですね。

―へぇ!何で入れたんですか?

山下:それはシンセを担当してくれた鈴木さんのアイデアで、お嫁さんなんで結婚式のイメージで…2秒くらいなんですけど。

―凝ってますねぇ!

タケイ:あとはやっぱりライブで聴いてほしい曲ですね。音源通りにはいかないけど、曲の間奏辺りで、ギターソロの裏でセッションっぽくなるんですけど、それが10回中1回くらい拍を見失うので、それが見どころっちゃ見どころです(笑)。

モリヒロ:それが聴けたときには、何かいいことがあるという(笑)。

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当時付き合ってた子への歌なんです。彼女の家にギターがあって…(山下)

―(笑)ありがとうございます。じゃあ「君のギター」は?

山下:これも“みんなのうた”ですね。

井上:ラブソングですよね。

モリヒロ:これこそサウンドで言えば“なんちゃって”だよね、ジャジーな感じで。

井上:初めてあんな演奏しましたもん。

タケイ:僕ジャズってあんま聴いたことなくて、初めてな感じでした。

モリヒロ:ジャズってこういう感じなんでしょ?みたいなね(笑)。

山下:多分ジャズの人に怒られるよ。“ジャズ風味”ってことで!

―なるほど(笑)。あとはやっぱり歌詞、気になりますよね。

山下:これ、実は曲を作った当時付き合ってた子への歌なんです。彼女の家に行ったときにギターがあって、それで思いつきました。

一同:へ~!

―そうだったんだ!私歌詞読んで“憧れの女性”か“片思い”の人への歌かな、と思ってたんですよ。

山下:まぁ、そんなようなものだったんで。片思いに近かったです。結局いろいろあって、すぐ別れちゃったんだけど。僕はあんまり面と向かってラブソング書くのが苦手なんで…。

―すごく純粋な曲ですよね。(モーモールルギャバンの)ゲイリーさんも「俺ならこうは書かない」ってコメントされてましたけど…。

山下:そうですね。僕、人のこと好きになると、こう(一直線、周りが見えなくなる)なっちゃうんですよ。盲目的というか(笑)。でもそれを相手に直接ぶつけられないんです。だから「君のギターになりたい」って歌ってて。すごく好きな人には、もう喋りかけられないみたいな感覚あるじゃないですか?そういう気持ちですね。

―あ、それすごく分かります。とってもピュアな気持ちなんですね。でも実はちょっと意外な印象もあって。もうちょっと隠された意味もあるのかなって思ってたんだけど。

山下:いや、これはもうそのまま、純粋な、まっすぐな曲ですね。

井上:これクリスマスのときに作ったんだよね。

山下:あ~、だから曲調がそんな雰囲気なんだ。

井上:僕も歌ってるんでそこも聴いてほしいです。ギターソロの直後に。

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何でもガッチリ決めなくても良くない?って前から思ってて。自分に言い聞かせてる部分もあるけど。本当に、俺もわからないし(山下)

―はい、山下さんももちろんですけど、すごくいい声ですよね!では「ロックバンド」についても聞かせてください。

モリヒロ:これは僕がわがままカレッジ始めてちょうど1年目くらいのときに、家庭の事情で就職しまして…(笑)

山下:それ重いし、違うでしょ(笑)。でも彼の就職が決まったときに作った曲ですね。

―これは、いろんな側面の核心を突いてる歌詞だなぁと。一言で言ったらあれですけど、音楽を続けてくってやっぱり難しいことで、選択すべきときや、分かれ道っていっぱいあると思うんです。

山下:はい。…音楽をもっとガチガチにやってる人たちっているじゃないですか。例えば“こういうギターロックで、キメッキメで!”を本気でやる人たち。その点僕らは割とポップだし、ジャンルは広い方だと思うんです。ガッチリ決めるのもいいんだけど、でも「そうじゃなくても良くない?」って僕は前から思ってたんですよね。だから「別に仕事をしててもいいじゃん」って。

―なるほど。じゃあこの歌にはそういう意味合いもこもってるんですね。「ロックバンドじゃなくてもいいじゃん」って歌詞もありますけど。

井上:例えばメンバーに彼女がいて、「お前ライブに彼女連れてくんなよ!」っていう意識はなくてもいい、的な?

山下:そうそう、それに対してどうこう言うのもそもそもおかしいじゃんって。あとは風刺というか、ちょっと皮肉の要素もあり…。

―そうかぁ。歌詞の最後で「それでも君はロックバンドが好きかい?」って問いかけてますよね。非常にいろんな意味を感じられて、考えさせられるというか…。

井上:バンド仲間とかで「この曲好き」って言ってくれる人は多いですね。

―やっぱり!バンドをやってる人達はもちろんそうだと思うんですけど、聴き手側として、個人的には励まされるっていうか、分かるなぁ、これを言葉にしてくれる人がいるんだなぁっていうのをすごく感じました。

山下:自分に言い聞かせてるっていう部分もあると思うんですけどね、本当に。俺も分かんないし。あとサウンド面で言うと、この曲は結構アレンジに苦労しましたね。いろいろ試して。

モリヒロ:最終的に“真心ブラザーズ風味”に落ち着いたんだよね。

山下:そう。ガツッとパンクっぽくやっても違うし、ファンクっぽくやるのも違うな、と思って。間をとって真心ブラザーズっぽくやったらしっくり来たんです。

タケイ:「拝啓ジョン・レノン」みたいな。

―そうだったんですね。ほんとにたくさんのバンドマンに好かれる曲だろうなと思いました。

井上:(音の旅crewの)guroが泣いてたよね。

モリヒロ:「いや~、ロックバンドで泣いちゃったわー」って(笑)。

タケイ:僕もこの曲わがままカレッジの中で一番好きで、山ちゃんにも前に言ったんだけど、多分酔っ払ってて忘れてると思う(実際忘れていたよう)。ほんとにいい曲ですよね。

―聴く度にグッときます。

(​後編に続く)